部屋を案内してもらった。
小ざっぱりしてシンプル、という表現はまさにピッタリな部屋。
リビングに通常真ん中に居座る、海外のお宅にありがちな大型スクリーンのテレビが無い。
(日本と違って、部屋が大きいから)
それに、音楽教師だと言っていたのに、CDやプレーヤーもない。
ソファはあるけどテーブルはない。
当然家具類もない。
あるのは壁に飾ってある大型の絵が1枚、それに1羽の鳥を飼う鳥かご。
あまり部屋の中を詳細に書いても面白くないので、ベランダについて。
ベランダから見える景色がこれまた想定外だった。
なんと、コの字側になっていたので、街の景色が一切見えない。
ベランダから正面に見えるのは、同じマンション
一分のお宅では電気がついていて、住人がいるのが見える。
アパートメントは2階から11階まであるが、住人はそれぞれ何をしているのか、何軒かのお宅の中身が見えてしまっていいのか?
一軒はソファに座って、テレビ画面を見ているように見える。
他の1軒はベランダで男女4人で談笑している(笑ってなかったかもしれない)。
他の1軒はリビングを通して奥のキッチンで料理しているのが見える。
プライバシー丸見えってこと?
それも聞いてみた。
「ここはオーストラリアだから」
うーん、意味が分からない。
そのコ(弧)の字になっているのであれば中庭があると思っていたら、それもない。
あるのは中空にある、「オブジェ」。
写真ではなぜか植木が逆さになってぶら下がっている。
これが全部で6個。これもアートの1つなのか。
下に目をやると、壁の1つに滝があり、水があふれ出ている。
シースルーのガラスを通して、地下駐車場が見える。
(地下には入らなかったが、地下1階に専用のクルマと自転車の、地下2階には専用のクルマの駐車場があったようだ、土地を有効利用する日本の首都圏と同じ構図)
なんとも贅沢な作りのアパートメントに来てしまった。
こんなアパート(日本では高級分譲マンションっぽい。これも想像)に住んでいる日本での知り合いはいないので、正直別世界に来たようだ。しかも旅行先で。
旅行先だからこそ別世界に来れたんだ。速攻で考えを改めた。
ベランダから外を一通り見て、全容が分かったので、じゃあ今度は部屋でくつろごう。
部屋はとてもきれいなので、靴も脱いじゃえ。
足が楽になったところで、
「私のベッドルーム以外は共用だから好きに使って」
と彼女は言ってくれた。とはいえ、ホテルと違って、「はい、そうですか、では自由に使います」とはならないのが日本人。なかなか相手のお言葉を頂戴することができないものですよね。
それでも、なんとか「務めて」共用スペースをくつろぐことにしたのは1時間も経ってからだった。
そのくつろぎ加減が下の写真。
全然くつろいでない表情がありあり。
離れたところで、「チュチュッ」とかごの中で鳥が鳴く。
なんだかバカにしてない?と聞いてみたい心境。
彼女と部屋が一体で音楽で満ちている。
その時は70年代のロックかポップスかが流れていた。
話の糸口は簡単に作れそうな予感がした。
これだから旅は止められないんだよね。