タザリ湖も夕方になり、陽も傾き、アサートン高原の山の中だから、気温もどんどん下がりだした。
次に行きたいところもあるので、残された時間はせいぜい30分から40分。
静まり返った湖、サイズ的には水が澄んだ沼としか思えない規模。
空中を飛び交う鳥以外は、カモノハシすら見ることが出来ないほど、気配がありません。
「偽りがあるかどうかわからない」看板には、
「shhhh!(シー!)」
と書いてあるし、物音を立てるとカモノハシは逃げてしまうから、そーっと歩いてね、
とオーナーらしきオーストラリアのおじさんにも言われていたので、デジタルカメラのシャッター音すら立てることができないし、ましてや話すらできない。
そんな中、カモノハシのビューポイントらしきところが何か所かありましたが、全部は回り切れない。
仕方ないので、自分とそれ以外の2組に分かれて捜索開始。
少しでも水面に変化があれば、すっとんでいくつもりですが、じっとみていても変化なし。たまに水面に動きが見えたと思ったら、アメンボみたいな昆虫が水面をつついているだけ。やっぱり自分たちだけで見つけるのは不可能なんだろうか。
とその時、別働隊の’子供たちが抜き足差し足で、こちらにすっ飛んできた!
見た顏でわかる。小声でささやく。
「ねえねえ。こっちに見えたよ。早く来て!」
本当だったら、ラストチャンス。足音を立てず、細心の注意をもって現場に急行した。
水面には水しぶきも波も立ってないけど、カモノハシの茶色の表面が見て取れた。
いたーーーーー!
本物だ!しかも水中から水面に上がってくるところだ!
今か今かと待ち構えていた。
残念ながら水面ぎりぎりのところまで上がってきたが、顏を出すことは無かった。
しかし、あの愛嬌のある体形と、優雅な泳ぎは短いながら見物することが出来ました。
苦節何年だったのか、もう忘れてもいいかな?
再び顏を出すかもしれないと、数分粘ってました。
写真も1枚シャッター切れていないし。
そこへ、茶色の物体がゆっくりと動いているのがこちらに向かってきた!
再度カモノハシを見れるチャンスがきたのかも。
そこで、カメラのシャッターチャンスを逃すまいと構えたのが唯一したの写真でした。
この湖の主らしい、カメでした。
残念。そんなに甘くはなかったか!
ただ、観光時間外に無理なお願いをして、時間を取った甲斐はありました。
ただ、泳ぎ回る姿はもうちょっと見たい気がするけど、姿かたちすら見ることもできずに日本に帰国せざるを得なかった今までのオーストラリア旅行に比べると、はるかに収穫があったと思います。
けど。
ああ、またみたい。
これだから旅は止められません!
写真:2013年8月