「毛がふさふさして、超きもちいい!」
「ぜんぜん怖がらない!すごい!」
「草を食べる音が面白い!」
ついにウオンバット、しかも野生を目の前にして、最初は恐る恐る、そして
ついに手を伸ばして触れ合ったときに
「やっぱりここまで来てよかった」
と、まずはほっとするとともに、満足そうにしている子供たちを見て、こちらも充実した気分を感じています。
さて、場所ですが、野生のウオンバットの宝庫だと感じたのは世界遺産にも指定されているクレイドルマウンテン。
タスマニア第二の都市、ロンセストンから車で約2時間半。
ホバーとからも4時間程度ですが、私たちは東海岸の街(ビシェノ)から向かったため、途中食事や休憩、買い物しながら、丸一日。北海道並の広さですからね。それなりに大きいですよ。
タスマニア。
さて、ウオンバット。遭遇率の高い場所があることは事前に聞いてました。
(まあ、テレビでも何度か放映されているから、知っている人は知っていると思いますけど)クレイドルマウンテンのビジターセンターから国立公園内に入ることクルマで約10分。
最初に現れる駐車場、「ローニークリーク」(公園内をピストン輸送しているバスを利用して最初のバス停でも行ける)から歩いて行けます。駐車場からわずか5分
で、さっそくウオンバットを手の届きそうなところで・・・!
超近い!
しかも、尾瀬や大正池のように、しっかりと遊歩道(ボードウオーク)が用意されているので、ほぼ平地。
超楽!
それはともかくとして、クレイドルマウンテンは文字通り山の中。
天気も頻繁に変わる。
ふもとの町が快晴だったのに、国立公園内の高山に入ったとたん天気が急変。
そして、弱含みだった雨が一気に横殴りのシャワーが短い時間に降ったりやんだりの繰り返し。
こんな雨の中、ウオンバット、その他野生動物が現れるのか?
晴れた日に出直さないとだめかな??
でも、食事時には絶対に見れるって言っていたけど、こんな土砂降りでも姿を現すのか?
半信半疑。けど時間はすでに5時半になろうとしているので、考えている時間はない。
選択肢がないから、土砂降りの中さっそくローにークリークの駐車場にクルマを止めて歩き出すこと1分。
先を歩く目のいい子供たちがなにやら騒いでいる。
さっそく発見か?
と思いきや
「動物の糞(ふん)、糞」。なんだ。でも草原ではなく、草原から約50-60センチの高さに作られた人間用の
ボードウオークにあるなんて、こんなところまで動物は歩いているだ。
で、この動物はやっぱりウオンバット?それともワラビーか何か?もしかしたらタスマニアデビル?
そんな淡い期待と勝手な妄想を抱きつつさらに歩くこと約2分。
(短時間での展開が速い)
「あー、いたいた。ウオンバット」
またしても目がいい子供たち。
少し外れの草原の中にうごめく2頭の群れ。距離にして約20メートルか。まさしくずんぐりむっくりで、茶色の毛並みが雨のシャワーでどっぷりと濡れているが、紛れもないウオンバット。
もうこんな近くで見れるなんて、われわれファミリーは色めきたちました。
さらに歩くこと3分。覚めやらぬ興奮は、そこから一気に最高潮に!
「あ、目の前にいる!」
今度は間近なんてもんじゃないです。
遊歩道から距離にして3メートル。
目の前で夕食の草にありついている。その草を食(は)む音が聞こえる。
「ごり、ごり、ごり、ごり」
決して止めることがない。食べ続けている限り。
まさに動物の息遣いが間近で見れるなんて、われわれも想像だにしてませんでした。
しかし、驚きはまだ続きがありました。
どうやら、食べる草の場所を移動したいみたい。歩きだした方向は、我々のほうに向かってくる。
そして、遊歩道から完全に手の届くところで停止して、再度草を食べ始めた。
「ここからだったら手が届くんだけど、触っていいのかな?」
十分な距離。
ウオンバットは人間におびえることは一切ないと聞いている。
ウオンバットは人間にも危害を与えないと聞いている(噛んだり、刺したりしない)。
それに、周囲は我々以外はいない。
そして、ここには二度とは子供たちをつれてくることはないだろう。
ここで触らないと、一生後悔するかも、それとも触ってはいけないから止めておくべきか。
散々1分ほど悩んだ末、まずは子供たちだけは触らせることに。
ただし、背中の辺りを軽くさする程度だけにとどめるように。
「じゃあ、触るね。ぜんぜん逃げないね。それに毛がふさふさしていて気持ちいいよ」
良かったじゃない。触れて。
しかも、飼いならされた動物園のではなく、野生の、だよ。
もしかしたら、触られ慣れている?
傘を差しながら、雨をよけながら、ひたすら触り続ける。
ああ、この時間をずっと共有し続けたい。
残念だけど、ホテルのチェックインがまだだから、そろそろ行かないと。
明日もクレイドルマウンテンを散策するし、また来るから、と子供たちを諭して、
ようやく遊歩道を引き上げることに。
一生記憶に残る30分。そう願って、ウオンバットに別れを告げる。
明日にまたドラマが待っているとは知らずに。
雲の切れ目から、まだ沈んでいない太陽が顔を出し始めていた。
写真:2017年3月30日