もう道は覚えている。
観光のメッカ、フリンダース駅からもMCGの競技場が見える。
距離感さえわかれば誰だってあと何キロかわかる。
道もほぼ一本道だ。
ここにきて、人工的に作られたスロープは急激な上り坂に変わる。
おかしいな、確か昨日歩いたときは何も感じず、風景写真を撮りまくっていたところだったはずなのに。。。
距離にして100メートルも無い。
ほとんどのランナーは歩いている。相当堪えている。
自分の身体も疲労感で覆われている。足は前に出ないけど、ここまで来た。
ゴールできずにリタイアすることは多分有り得ないだろう。
と思っていたら、随分たくさんのランナーが路肩で座っているか横になっている。
その周りに救急隊員や、付き添いのランナー。友人かカップルか、いずれにしても連れと思われる。
ここで力尽きてしまうなんて。
なんとも残念無念だろう。
(中には一番最後のゴールゲートがもう見えている500メートル手前くらいで救急車が横付され、今にも担ぎ出されそうなランナーもいた。その後そのランナーはゴールまで辿りつけたんだろうか??)
でも、身体が優先だし、無理して後遺症を背負ってしまっても仕方ない。
メルボルンマラソン大会は今回は最後ではないので、また次回申し込めばいいんだ。
(特にメルボルン市民にとっては。日本人も休みが取れればまた来れる)
200メートル置きにそんな光景を見ていて、自分も無理していないかよく考えたが、息も切れていないし、大丈夫!
もうそろそろだ!
そう思って見えてきたマラソンゲートは、フルマラソン用のゴールゲートだった!
ハーフマラソン用のゴールゲートはまだ別のところだった。
どういうことかというと、フルマラソン用のゴールゲートはMCGの正入り口のところに設けられている。
一方で、ハーフマラソン用のゴールゲートは、MCGの裏門に相当するところに設けられている。
競技場は日本の野球場や陸上競技場よりも若干一回り大きめなので、まだしばらくかかるということだ。
フルマラソン用のゲートを越して、もう少しだ。
MCGの競技場の周りには既に競技を終えたランナーたちが休息中。
僅かに応援してくれるランナーもいるが、ほとんどは座り込んでいるか、散策しているか。みなさん思い思いだ。
そんな風景を右側のMCGを見ていたら、前方からやかましい音楽と、マイクを持って叫んでいる司会者のような人の声が聞こえていた。しかも突然!
もしかしたら、ゴール?
鳴り響く音楽はなぜか
「オレーオレオレオレー!ユガラチャー、ユガラチャー!」
これってサッカーの時にみんなで応援するときのじゃなかったっけ?
なんか合わない。
小さなスピーカーから割れんばかりに聞こえてくる。
司会者が前方右側で何やら叫んでいる。
身体の疲労はかなり逼迫してきたが残り数百メートル、数十メートル。恰好つけてダッシュして、のちのち疲労骨折しても仕方ないため、無理は全く考えなかった。
それにしても、自分よりも先にゴールに向かっている人をみると。
身長だけではなく、横も大きな人がいっぱいいる。
良くあの体で、という指摘はしてはいけないと思うが、日本人の感覚からすると本当に驚いてしまう。逆にオーストラリア人にとっては日本人の方の体型が小さく見えるから、よくあの体で、と思われているかもしれない。
それでも、自分にとっては1つの驚き。
再度前方左側、今度は計測計が目の前に見えてきた。
あと数秒でゴールだ。
よく見ると画面の数値が見て取れた。
続々とランナーが来るので、じっとは見ていられないが、よくみると。
2時間27分 何秒か。
と見とれているうちに、両手も特に上げずに、ゴールゲートをくぐっていた。
人生初のマラソンは、途中リタイアもなく、歩くこともなく、無事完走までしてしまった。
実に心地よい。ゴールしたものにしかわからない達成感を、人生で初めて味わった。
これだったのか!
まだ喜びをかみしめるには至っていない。
あまりの天気の良さに、スタートしてゴールするまで、頬に風を受けることは一度もなかったくらいだった。
後日、ネットで見た個人ランキング。
15000人は登録されていると聞いたが、自分の順位は8200位。ゴールした人は9960人だからかなり後方のグループだ。
途中のトイレ休憩や写真のために立ち止った分を差し引き、スマホで計測したゴールまでの時間は2時間13分。
順位もタイムもどうでも良かった。これは競技ではなく、イベントなんだから。
オーストラリアでのマラソン、こんなに楽しいんだね!
写真はゴールゲートをくぐった後。
ランナーの皆さん、お疲れ様でした! See you!