フルマラソンがスタートしてから自分が参加するハーフマラソンスタートまで1時間を切っている。
日本の大会事務局まで戻り、着替えをしなければ。
戻るまで5分、早く歩けけば3分でもどれるはず。
ところが、7時30分に10キロマラソンがスタートするのだ。
(残念ながらスタートを見学する余裕はない。)
その集団がスタートラインに集合しだした。
また人の波である。
とても5分で戻れる状況ではなかった。
それよりも着替えやらトイレやらを済まして、スタートの前方に立ちたかったんだけど。
刻一刻と時が過ぎてゆく。
参加して楽しむことを念頭には置いているが、ちょっとだけ焦り始めた。
着替えたものや荷物を置く場所がなかなか見当たらなかった。
大事務局の日本人の道順に従ったんだけど、MGCというスタジアムが広すぎるのだ。
迷ったみたいだ。
トイレも込んでいる。しかもそこまで遠いじゃないの!
トイレを済まして、スタート会場に向かうと、既にスタート10分前になっていた。
オーストラリアは何事もゆっくりではあるが、時計の進むスピードは全人類・動植物共通だ。
そこで、スタート会場の前方にたどり着くことは諦めた。
後方からついていこう。
心を切り替えたら、なんだか気持ちがとっても軽くなった。
そうそう、これが大事だね。
あとで聞いた話だが、ハーフマラソンの参加者はこのイベント最大の1万5千人もいたとのことで、応募は早々に締め切ったとか。
人気のコースでもあったようだ。
それだけに参加できる喜びもひとしおだ。
さあ、そろそろカウントダウンが始まる。
時計の針はもうすぐ6時。
日本からの時計を持ってきて、オーストラリアに合わせていない。
時差は2時間なので、本当はまもなく8時。
日本だったらいつもなら寝ている。
家族ももちろん寝ている。
だから、電話で「いまからスタートするよ」なんて会話することは止めにしておこう。
家族は夢の中。そして自分は夢の中にこれから入るところ。
カウントダウンが始まった。
遠いので聴こえないけど、みながスピーカーと一緒になって声を上げているので、ようやく気が付いたのは6秒前。
シックス!ファーイブ!、スリー、ツー、ワン、GO-!
フルマラソンと同様、大騒ぎな歓声の中、スタートした。
けど、自分の周りには全くの動きなし。
みな余裕で写真とか、沿道で応援に来た家族とか友達とかとおしゃべりしている。
これもマラソンの風景なんだろう(というか、みな慣れたもののようだ)。
3分経った。
まだ動きがない。
先頭はどこまで行ったんだろうなあ。
などとはまったく思わない。
だって、人は人。自分は自分。それで十分。
そして、5分経った。
なんか動き出した。
あ、歩くスピードから若干小走りになったぞ。
相当後方にいたんだろうか。
300メートルほど歩いて、スタートゲートが見えてきた。
ようやく本当にスタートが切れそうだ。
その瞬間、前方に空間ができ、スタートをきることができた。
よし、楽しんでこよう。
皆さん、行ってきます!
と心で叫んで沿道の人々にアイコンタクトをし続けた。
(誰も関心は持ってくれてないようだけど)
スマートフォンのランニング用計測ツールのスタートボタンをぽちっと押した。